IgGを経口摂取した動物の免疫機能
牛乳たんぱく質に秘められた免疫系を介した多様な生体防御機能に関する一考察@信州大学(pdf 9ページ目)
4.牛乳たんぱく質およびそのペプチドを経口摂取した動物の免疫機能
1) IgGを経口摂取した動物の免疫機能
哺乳類の新生仔は免疫系をはじめとした自己の感染防御機構が完成しない状態で出生する。そのために、母動物はミルクを介して自分が行動している環境に生息する様々な病原性生物に対する抗体を出生直後の子孫に受け渡している。例えば、乳牛の場合だと胎盤を介して親から胎仔への受け渡しはできないために、すべて牛乳を介して受け渡している。そのために、出生後3週間に牛乳に分泌されるIgG1量はおよそ1.5kgといわれている。1955年、Peterson and cambellは、病原菌を妊娠牛に注射しておけば、その乳牛が分娩後に分泌する牛乳は注射した病原菌による感染を予防できるという理論を提唱した。その後、この理論に基づいた牛乳抗体の利用に関する研究が各国で活発に行われ、マウスやラットなどの実験動物はもとより、子ブタや仔ウシなどの家畜、さらには幼児や成人などへの経口投与試験により、牛乳IgG抗体は毒素原性大腸菌、虫歯菌、赤痢菌、ロタウイルス、寄生虫などの様々な病原性生物に対する感染予防に効果があることが確認されている。
一方、牛乳中のIgGの抗原結合活性やエフェクター活性は低温保持殺菌や脱脂乳への乾燥処理ではほとんど低下しないことや室温で脱脂乳を1年間保存しても抗原結合活性やエフェクター活性はほとんど低下しないことが確認されているとともに、それに基づいて調製したIgGを豊富に含むホエイたんぱく質濃縮物のマウスへの経口投与試験において、投与したIgGの抗原結合活性の半分以上が糞便中に排出されることが観察されている。これらのことは、IgG活性を高く維持した食品の開発や販売、並びにその食品を摂取した場合に腸管内で抗原結合活性やエフェクター活性が機能できることを示唆している。
筆者らは、300mlの牛乳に含まれるIgGを体重60kgのヒトが毎日1回、1ヶ月続けて摂取したと想定し、60kgのヒトとの体重換算でマウスが1ヶ月間IgGを摂取すると、腸管と血液の飼料たんぱく質に特異的なIgGレベルやIgAレベルがIgG無添加飼料での飼育の場合よりも統計的に有意に低下し、マクロファージやNK細胞活性が統計的に有意に増加することを確認した。この観察は、IgGの経口摂取は、単にIgGが認識している微生物に対する感染予防効果を発揮するだけではなく、細胞レベルで免疫系を調節できることを示唆するものである。これらのことから、免疫調節食品や飼料素材としてのIgGの利用に関する今後の検討が望まれる。
なお、26種類のヒト病原菌を免疫したウシが分泌した牛乳を材料にした健康食品が現在、市販されており、それを摂取したヒトの中には免疫機能が改善されたということもいわれ、今後、その分野での科学的根拠を得るための研究が望まれる。
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